糖尿病の食事療法をはじめると、しばしば問題となるのが【空腹感】です。
糖尿病では、血糖コントロールが悪いと、症状の一つに異常な食欲が起こります。
また食事療法では、指示された1日の摂取カロリーを守って食べることになりますが、それまで食べ過ぎの傾向にあった人にとっては少なく感じ、辛い思いをする人が少なくありません。
糖尿病食とは、「量的に制限する食事」と考えてしまうかもしれません。
しかし、指示エネルギーはとりわけ少ないわけではなく、本来適正な量です。
最初の頃は、「一生この空腹感と戦っていなかなければならないのか・・・」と落ち込んでしまう人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
食事量に慣れ、血糖をうまくコントロールできるようになれば解消されます。
目次
工夫をしよう!
決められたカロリー内の範囲内でも、ちょっとした工夫で満足感を高めることはできます。
調理の工夫
主食のカサを増やす。
主食の量がもの足りなく感じるときは、雑炊やおかゆにするのがおすすめ。
カサが倍以上に増えるので、見た目にも満足感UP。
低カロリー食品を使う。
きのこ類やこんにゃく、海藻類、山菜などは低カロリーなので、たっぷり使えます。
ボリュームアップになるので、毎食取り入れたい食品です。
カサの多い食品を選ぶ。
例えば、トロ1切れ20gは、貝柱中4個150gと同じカロリーです。
量をみると、1切れと4個だと、4個の方が見た目的に満足感があります。
同じ仲間、同じカロリーなら、カサがあるほうが満足感が高いです。
骨付き、殻つきで仕上げる。
スペアリブや殻つきのエビやカニなど、骨付きや殻付きの魚介類や肉類はそのまま調理すると、見た目のボリューム感&豪華さで、実際に食べる量以上の満足感が得られます。
また、骨や殻をはずす手間が、早食いを防ぐことができます。
歯ごたえを残して仕上げる。
ほどほどに歯ごたえがあると、よく噛んで食べることになります。
噛むことで満腹中枢が刺激され、またその分、食事時間も長くなり満腹感が得られやすくなります。
食卓の皿数を増やす。
例えば、揚げ物とサラダを1つの皿に盛り合わせるのではなく、揚げ物にパセリなどを添える程度にして、サラダは別盛りにしましょう。
同じ分量のおかずでも皿数が多くなることで、たくさん食べた気持ちになります。
食後の片付けを考えると使う食器は少ないほうが楽なのですが、空腹時間が強い時期は、楽より、空腹解消をまず考えた対策をとるのがおすすめです。
食べ方の工夫
食物繊維が豊富な野菜などから食べることで、血糖値の急上昇を防ぎましょう。
そして「満腹」を決めるのは、実は”胃”ではなく”脳”です。
この満腹中枢がONになるのが、食事を始めて20分以上経ってから。そのためゆっくり食べることが大事です。
- 野菜料理や汁物から食べる。
- よく噛んでゆっくり食べる。
- ながら食いをしない。
- できるだけ1人で食べないようにする。
- 指示エネルギーの範囲内で間食をとる。
- 夜遅い時間に食べない。
一度にすべて行うのは難しいかもしれませんが、できることからはじめましょう。
空腹時・間食におすすめ食材
とはいえ、空腹を我慢するのはつらいです。
我慢した結果、無茶食いしては元も子もありません。
そこで、カロリー、糖質を考え、空腹時や間食などにおすすめがあります。
それは、ナッツ類(アーモンド、クルミ)、チーズです。
ナッツ類
ナッツは低糖質で、歯ごたえが良く、少ない量でお腹を満たしてくれるので小腹が空いた時の間食におすすめです。
-ナッツの糖質・カロリー量-(100gあたり)
糖質 | エネルギー | |
くるみ | 約4.2g | 約674kcal(1粒あたり約27~40kcal) |
アーモンド | 約9.3g | 約606kcal(1粒あたり約6~7kcal) |
バターピーナッツ | 約14.4g | 約592kcal(1粒あたり約4kcal) |
マカダミアナッツ | 約11.7g | 約720kcal(1粒あたり約14kcal) |
カシューナッツ | 約20g | 約576kcal(1粒あたり約8kcal) |
購入する際は、塩や砂糖などで加工されていない(味つきのものでない)、素焼きのものを選びましょう。
アーモンド
素焼きのもので、1粒(約1g)あたりの糖質量は約0.1g。
抗酸化作用を持つビタミンEが豊富で、良質な油であるオレイン酸も含まれています。
ただし、カロリーは100gあたり約606kcalと高カロリーなので、食べ過ぎに注意が必要です。
10粒程度を目安にされるといいのではないでしょうか。
クルミ
1個(約6g)あたりの糖質量は約0.3g。
抗酸化作用が高く、ビタミンやミネラルが豊富。必須脂肪酸のオメガ3も含まれています。
ただしカロリーが高いので、1日3粒が目安です。
ナッツは空気に触れると酸化しやすいので、袋を閉める時には中の空気をなるべく抜いて冷暗所に保管しましょう。
「ナッツの糖質・カロリー量」を見てもらうとわかりますが、糖質が多いものがあるので注意が必要です。カシューナッツなどは、100gあたり糖質約20gということで食べるのを控えましょう。また、ナッツではないですが、栗や銀杏はは100gあたり糖質約25gあるので、こちらも食べるのを控えましょう。
糖質 | エネルギー | |
栗 | 約25g | 約164kcal(1粒あたり約23kcal) |
銀杏 | 約25g | 約171kcal(1粒あたり約6kcal) |
チーズ
チーズは、乳製品の中でも糖質が最も少ない食品です。
-チーズの糖質・カロリー量-(100gあたり)
糖質 | エネルギー | |
カマンベールチーズ | 約0.9g | 約310kcal |
プロセスチーズ | 約1.3g | 約339kcal |
カッテージチーズ | 約1.9g | 約105kcal |
パルメザンチーズ | 約1.9g | 約475kcal |
クリームチーズ | 約2.3g | 約346kcal |
例えば、一般的な6Pチーズが100gちょっと。
調理することなく、手軽に食べられ、1~2個だけで満足感が得られます。
小腹が空いた時におすすめです。
私の家も冷蔵庫には6Pチーズ、おやつストックにはアーモンドを常備。クルミも時々置いています。
もちろんナッツ類は素焼きのものです。
小腹がすいたときに、すぐに食べられて、ゆっくり食べることで満足感があり、おすすめです。
他には、最近糖質を抑えたお菓子やスイーツがあるので、そういったものを活用されてみてはいかがでしょうか。
おすすめサイト:糖質制限ドットコム
まとめ
糖尿病における空腹感の主な原因は、
- 血糖コントロールが悪いために起こる異常な食欲
- これまでの食べ過ぎ傾向による食事量への不満
が大きいです。
しかし、医師からの指示エネルギーは決して無理に制限しなければならないほど抑えたものではありません。
これが本来適正なもので、健康な人もこのエネルギー量を守るのが基本です。
最初は辛く感じる人もおられると思いますが、量に慣れ、血糖コントロールがうまくいき始めると解消されます。
短い人なら2週間、長い人でも2~3ヶ月もすれば、空腹感も強く感じなくなります。
そして、小腹が空いたときや間食したいときには、アーモンドやクルミ、チーズがおすすめです。
調理法や食べ方などを工夫し、楽しく食事をしましょう。