3大栄養素のうち、たんぱく質と脂質は食後の血糖上昇が緩やかです。
一方炭水化物は、急上昇させる作用があります。
そこで食後、血糖値を急上昇させる炭水化物に注目した食事療法が「カーボカウント」です。
目次
「カーボカウント」とは?
炭水化物のことを「カーボハイドレイト」といいます。
これを略して、「カーボ」と呼んでいます。
そして”数える”という意味の「カウント」。
「カーボカウント」とは、「炭水化物の量を数える」という意味です。
日本での糖尿病の食事療法は、日本糖尿病学会が推奨する「1日の摂取エネルギーをコントロールする食品交換表」に基づいたカロリー制限が一般的です。
この方法では、複雑な食品交換表を覚え、食事のたびにカロリー計算をしなければいけません。
一方カーボカウントは、食品の中の炭水化物の量を数えることが基本になり、炭水化物の多い食品については注意しなければいけませんが、少ない食品についてはそれほど注意を払わなくてもいいのが特徴です。
欧米では糖尿病の食事療法として取り入れている国が多く、日本でも注目されてきています。
種類
カーボカウントには2種類あります。
基礎カーボカウント
毎食の炭水化物(糖質)量をできるだけ一定にすることで血糖値の乱降下を防ぎ、安定させる方法。
1日の摂取エネルギーのうち50~60%を炭水化物(糖質)で摂取するように調整します。
応用カーボカウント
1型糖尿病(2型糖尿病の方も可)の患者さんを対象に、食事に含まれる炭水化物量で食事前のインスリン量を調整する方法。
基礎カーボカウントとは違い、炭水化物(糖質)の量を毎回一定にする必要はありません。
計算のしかたは?
カーボカウントによる食事療法は、できるだけ炭水化物の摂取量が抑えられる食品を選びます。
とはいえ、ただひたすら減らすわけではありません。
食事全体の50~60%を目安にします。
単位は、炭水化物の量15g=1カーボ(計算のしやすさから、10g=1カーボとする医療機関もあります)。
例えば、1日の摂取エネルギー量が1600kcalと指示されている人で、炭水化物の割合を60%とした場合、
1600 × 0.6 = 240g ← 1日の炭水化物の量
これをカーボであらわすと、
240 ÷ 15 = 16カーボ
1日の炭水化物摂取量は、16カーボになります。
これを1日の食事に割り振ります。
注意しないといけないことは?
カーボカウントを行う上で気をつけないことがあります。
必要な量の炭水化物は摂取すること。
カーボカウントの考え方を極端にすると、「血糖値を上げる炭水化物は糖尿病に悪い=食べない」としてしまう恐れがあります。
炭水化物は血糖値を上げるため控えたほうが良いのですが、それでも1日の総カロリーのうち50~60%の炭水化物は摂取すべきとされています。
栄養バランスも大切です。
腎機能が低下している患者さんが行う場合、まず主治医に相談を。
腎機能が低下している方は、塩分やたんぱく質の制限を行う必要があり、そのため栄養摂取量における炭水化物の割合を高く設定されています。
カーボカウントを行う場合は、主治医や管理栄養士などに相談してから行いましょう。
まとめ
食品交換表ではエネルギー(カロリー)なのに対し、カーボカウントは、食後、血糖値を上昇させる炭水化物に着目して行う食事療法です。
食品の中の炭水化物の量を数えることが基本になり、ややこしいカロリー計算をしないでいいのでわかりやすい!食品交換表による方法より自由度が大きいのが特徴です。
ただし、炭水化物(糖質)にだけに注目していればといっても、栄養バランスもまた重要です。
さらに、血糖値を上昇させる炭水化物を摂ることを必要以上に恐れ、おかずばかり食べていると、高脂肪、高たんぱくによる肥満リスクが高まります。
カーボカウントはあくまでも食事療法の一つです。
体の状態や体質に合わせ、血糖値コントロールができる自分に合った食事法を見つけましょう。