食物繊維とは、「ヒトの消化酵素で消化されない難消化成分」の総称です。
水溶性と不溶性があり、腸内環境を整え、免疫力を高め、様々な病気のリスクを低下させてくれます。
そして糖尿病、予備群の人にとってうれしいのが、血糖値の上昇を緩やかにしてくれる効果があること。
血糖値を下げる代表的な成分【食物繊維】。
糖尿病の食事で重要なキーワードである食物繊維について詳しく見ていきたいと思います。
目次
食物繊維とは?
改めて、食物繊維とは、人間の消化酵素では分解されない成分です。
人間はは食物繊維を消化する酵素を持っていないため、摂取した後はそのまま大腸まで運ばれ、排泄されます。
一見、ただ体の中を素通りしていくだけのように思われる食物繊維、それが「第6の栄養素」として注目をされたのは、生活習慣病に対して有効に働くことがわかったからです。
主な働き
- 糖質の吸収をゆるやかにし、血糖値の上昇を抑える。
- 不要な物質や有害な物質を吸着して体外に排出する。
- 腸のぜん動運動を促進し、スムーズな排便(便秘予防、改善)を促す。
- よく噛まないと飲み込めないため、必然的に噛む回数が増え、満腹感を得やすく、食べ過ぎ防止につながる。
- 腸内の善玉菌を増やし、腸内環境をよくする。
適量の摂取が、大腸がん、肥満、糖尿病、心臓病のリスクを低下させてくれます。
「水溶性」と「不溶性」に分けられる
さらにくわしく食物繊維を見ると、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」の2つに分けられます。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、スポンジのように水分を吸収してゲル状になり、腸管での余分な栄養素や有害物質を体外に排泄する作用があります。
- ブドウ糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の上昇を抑えてくれる。
- コレステロールの吸収を抑制する。
- 胆汁酸を吸着して体外に排泄する。
などの働きが期待されます。
さらに、食塩のナトリウムと結びついて便と一緒に排泄されるため、血圧を下げる効果もあります。
-種類(食品)-
種類 | 多く含む食品 |
ペクチン | 果物、特にりんごやかんきつ類の皮、野菜 |
グアーガム | 樹皮や果皮の分泌物 |
アルギン酸 | こんぶ、わかめ |
グルコマンナン | コンニャク |
アガロース | 寒天 |
イヌリン | ゆり根、ごぼう、さといも |
β-グルカン | きのこ類、大麦 |
フコイダン | もずく |
生活習慣病予防、改善に強い味方の栄養素です。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は水に溶けませんが、腸内で水分を吸収すると数倍から数十倍にもかさを増す性質があります。
腸の内容物(便)のかさが増えることで大腸のぜん動運動が活発になり、便の移動をスムーズにして排便を促し、腸内の有害物質を体外に排泄する働きがあります。便秘の予防・解消したり、腸に関する病気を抑制したりします。
また、不溶性食物繊維を多く含む食品はかたくてよく噛まないといけないものが多いため満腹感を得やすくなり、食べすぎを抑制するのにも役立ちます。
-種類(食品)-
種類 | 多く含む食品 |
セルロース | 穀類、豆類、野菜 |
ヘミセルロール | 米ぬか、小麦ふすま、豆類、海藻類 |
リグニン | 豆類、ココア |
キチン | カニ、エビの殻 |
満腹感を得やすく、食べすぎを防いでくれる栄養素です。
血糖値の上昇を抑える食べ方
水溶性の食物繊維は、例えば、コレステロールなどを吸着して体の外に出してくれる作用や、ブドウ糖の吸収をゆっくりさせて血糖値の上昇を抑えてくれる作用があります。
そのため、食事のはじめにしっかり摂るのが効果的です。
-食物繊維の多い食品-(1食あたりの目安量)
食べ物 | 食物繊維の含有量(g) |
納豆(1パック50g) | 3.4 |
ブロッコリー(70g) | 3.4 |
ごぼう(1/4本50g) | 2.9 |
ほうれん草(80g) | 2.8 |
切り干し大根(1鉢10g) | 2.7 |
春菊(100g) | 3.2 |
ひじき(8g) | 3.5 |
大豆(20g) | 3.4 |
キウイフルーツ(80g) | 2.3 |
干し柿(70g) | 11.3 |
1日3食、欠かさず摂りましょう。
食物繊維豊富な野菜じゃないと意味がない!
食後の血糖値を緩やかにするためには、食物繊維が豊富なものでないと意味がありません。
レタスやキャベツ、キュウリは少ないので、ブロッコリーや海藻、キノコなどを摂るようにしましょう。
摂り過ぎると?
摂り過ぎはミネラルの吸収を阻害するので注意が必要です。
しかし「国民健康・栄養調査」でよると、毎年ほとんどの年齢で1日の目標摂取量が達成されていません。積極的に摂りたい栄養素です。
人によっては、食物繊維をたくさん摂ると、お腹が張ったり、下痢や腹痛を起こしたりすることがあります。
しかしたいてい一過性のものです。そのような場合は、少しずつ量を増やすようにしていきましょう。
野菜ジュースは野菜の代わりになる?
野菜を食べる代わりに野菜ジュースを飲んでいる方、多いと思います。
しかし、血糖値の面からみると、野菜ジュースは野菜の代わりにはなりません。
まず、ジュースだと食物繊維が少なくなってしまっています。さらに、糖分や塩分が入っている場合があります。
また、ジュースという形は早く吸収されてしまうので、その分血糖値が上がりやすくなってしまいます。
野菜はそのまま食べたほうが、血糖値が上がりにくいです。
まとめ
食物繊維には様々な働きを持っています。
中でも糖尿病の人にとってありがたいのが、ブドウ糖の吸収速度を緩やかにし、食後の急激な血糖値の上昇を防ぐ働きです。
低カロリーで、ウエイトコントロールにも効果的な食物繊維は、糖尿病予防・改善の大きな味方!
しかし残念ながら、食生活が欧米化するに伴い、食物繊維の摂取量が減ってきています。
1日の摂取目標量は男性20g以上、女性は18g以上。
1日3食、食事の最初に欠かさずしっかり摂りましょう。