糖尿病やその予備群の方はもちろん、血糖値が気になる人にとって「糖の吸収を穏やかにする」食品はとても気になります。
それも【特定保健用食品(トクホ)】という科学的根拠(エビデンス)あると、さらに魅力的です。
私も購入するかどうかは別にして、どんな商品なんだろうかととりあえず見にいきます。
そこでよく目にするのが「難消化性デキストリン」という成分。
一度は目にしたという方、多いのではないでしょうか。
特保なので科学的根拠があり、安全性が高いんだろうなと思うものの、聞きなれない成分で、実際のところ「どんな成分でどのように使ったらいいんだろう?」「副作用は?」「注意ポイントは?」など、気になります。
安心して使用するために、どんな成分なのか、どのように利用するといいのか、副作用や危険性などについて調べてみました。
目次
難消化性デキストリンとは?
難消化性 → 消化されにくい
デキストリン → デンプン
難消化性デキストリンは、じゃがいもやとうもろこしなどに含まれるデンプンをアミラーゼで加水分解し、その中から消化されにくい成分を抽出し、調整した水溶性食物繊維です。
似た名前の「デキストリン」に注意しましょう!!
「難消化性デキストリン」も「デキストリン」もデンプンから加工されたものです。
しかし、「難消化性デキストリン」は食物繊維なのに対し、「デキストリン」は糖質です。
まったく異なるものなので注意しましょう。
6つの働き
難消化性デキストリンの持つ6つの優れた働きを紹介します。
食後血糖の上昇を緩やかにする
難消化性デキストリン5g配合したお茶と一緒にうどん定食(うどんと米飯)を食べ、食後の血糖値を測定したところ、難消化性デキストリンを配合していないお茶と一緒にうどん定食(うどんと米飯)を食べた時と比べ、食後の血糖値の上昇が抑えられ、インスリンの上昇が緩やかになることがわかりました。(出展:J.Nutritional Food 5(2).31-39.2002)
難消化性デキストリンは、一定の機能表示を許可する特定保健用食品(トクホ)の関与成分として認められており、難消化性デキストリンを配合した食品は「糖の吸収を穏やかにする」と表示することが許可されています。
おなかの調子を整える
難消化性デキストリンを1日5g含む飲料を10日間摂取したところ、排便回数、排便量が増加し、便の性状と排便後の感覚が良好になったという結果がでています。(出展:健康・栄養食品研究2(2).52-57(1999))
難消化性デキストリンは一定の機能表示を許可する特定保健用食品の関与成分として認められており、難消化性デキストリンを配合した食品は「おなかの調子を整える」と表示することが許可されています。
食後中性脂肪の上昇を緩やかにする
脂肪の多い食事(ハンバーガーとフライドポテト)とともに、難消化性デキストリン5g入りの飲料を摂取したところ、食後の中性脂肪の上昇が抑えられることがわかりました。(出展:Eur J Nutr 46.133-138(2007))
内蔵脂肪の蓄積を低減する
BMI23以上の成人男性36名を対象とし、難消化性デキストリン10gを1日3回、3か月間摂取したところ、内臓の脂肪量が減少しました。ある被験者は、ウエストが10cm細くなったことが報告されています。(出典:肥満研究 13,34-41(2007))
ミネラル吸収を促進する
これまで食物繊維はミネラルの吸収を阻害すると考えられていましたが、低粘度で腸内細菌に利用されやすい食物繊維は、大腸でミネラルの吸収を促進することが明らかいなってきました。
動物実験では、難消化性デキストリンを食べた量が多い群ほど、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の吸収を促進することが確認されています。(出展:Eur J Nutr(出版準備中))
また、血液中の鉄成分が低値の女子大学生を対象に、難消化性デキストリン5gを1日3回、4週間摂取したところ、ヘモグロビン値が摂取開始前に比べて増加し、改善が認められました。
中性脂肪、コレステロールを低下させる
難消化性デキストリン10gを食事とともに1日3回、3か月間摂取したところ、中性脂肪と総コレステロールが低下したことが報告されています。(出典:日本食物線維研究会誌 4(2) 59-65(2000))
特徴
難消化性デキストリンの特徴です。
・水に溶けやすく、透明
・粘度が低い
・甘味が少ない(砂糖の10分の1程度)
・味にクセがない
・熱および酸に対する安定性、保存性などに優れている
食品に添加しても、食品の味や見た目を変えることがないため、様々な食品に添加しやすく、使いやすいです。
安全性
日本では、消費者庁長官が許可する特定保健用食品(トクホ)の関与成分となっています。
また米国FDA(食品医薬品局)では、「1日の摂取量の上限値を明確に定める必要がないほど、安全な食品素材である」と認められています。
安全性を調べるヒト試験で、難消化性デキストリンを1日3回、毎食前に10gを16週間にわたり摂取したところ、血圧や消化器障害など、特に問題となる症状は見られず安全であると報告されています。
もともと食物に含まれている食品であり、安全な食品素材です。
適切な摂取量
特に規定はないようです。
そこで、「規格基準型」の特定保健用食品(トクホ)として表示できる分量が参考になるのではないかと思います。
消費者庁の「特定保健用食品(規格基準型)制度における規格基準」によると、
- 「難消化性デキストリンが含まれているのでおなかの調子を整えます」
1日摂取目安量:3~8g。 - 「食物繊維 (難消化性デキストリン) の働きにより、糖の吸収を穏やかにするので、食後の血糖値が気になる方に適しています」
1日1回食事とともに摂取する目安量:4~6g。 - 「食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる食物繊維 (難消化性デキストリン) の働きにより、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにするので、脂肪の多い食事を摂りがちな方、食後の中性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます」
1日1回食事とともに摂取する目安量:5g。
と書かれています。
そのことから、
- 食後の血糖値が気になる方は、食事ごとに4~6g
- おなかの調子を整えたい方は、1日3~8g
- 食事に含まれる脂肪が気になる方は、食事ごとに5g
を目安に摂取されるといいと思います。
副作用
もともと食物に含まれているものなので、重い副作用を起こすことはないといわれています。
しかし、難消化性デキストリンは水溶性食物繊維です。摂り過ぎるのはよくありません。
以下のような症状が現われることがあります。
下痢になる
難消化性デキストリンは食物繊維なので、腸の善玉菌を増やしたり、腸の調子を整えたり、腸内環境を改善し、お通じをよくしてくれます。
しかし摂り過ぎると便が柔らかくなりすぎてしまい、下痢になりやすくなります。
おならがでやすくなる
難消化性デキストリンには整腸作用があり、善玉菌の運動を活発化してくれます。善玉菌が活性化されると、腸内にたまっていた腐敗ガスが排出されます。
おならが出るのは腸が活発に動いている証拠であり、悪い現象ではありません。
その際、もともと便秘などで悪玉菌が優位な腸内環境の方は、悪玉菌による腐敗ガスがたくさん発生しているため、最初は臭いおならがたくさんでてしまうことがあります。
しかし難消化性デキストリンを継続して摂取し、腸内環境が整ってくるにつれおならも次第に減り、落ち着いてきます。
ただし、摂り過ぎると善玉菌とともに悪玉菌も増やしてしまうので、おならが出やすくなります。摂り過ぎに注意しましょう。
便秘になる
水溶性食物繊維には、スポンジのように水分を吸収してゲル状になり、便の排出をスムーズにしてくれます。
しかし腸内で水分が不足しているとスムーズに排出できません。
難消化性デキストリンを摂り過ぎ、腸内に必要な水分がない場合、かえって便秘になっていしまいます。
摂り過ぎに気をつけるとともに、「難消化性デキストリン」を摂る時は水分もとるように心がけましょう。
胃痛・吐き気が起こる
食物繊維が過度に胃へ負担をかけてしまうことが原因で起こります。
難消化性デキストリンは消化されにくいのが特徴です。
しかし胃は消化をするのが仕事の器官。胃は消化されにくいもの(難消化性デキストリン)をなんとか消化しようと頑張ってしまい、それが大きな負担となり、胃痛が起こってしまいます。
過剰に摂取しないように気をつけましょう。
日ごろからお腹の調子が崩れやすい方は、少量からはじめましょう。
難消化性デキストリンは優れた効果を持つ、安全性の高い成分です。
しかし過剰摂取してしまうと、下痢・便秘、おなら、胃痛などの症状が起こり、せっかくの優れた効果が発揮されません。
「何事も過ぎたるは及ばざるが如し」です。
適量を続けることが大切!摂取目安量を参考に、体質・体調に合わせて摂るようにしましょう。
摂取を控えた方がいい人
難消化性デキストリンは自然由来のものなので、健常者や血糖値が気になる方などであれば、基本的に過剰摂取しない限り問題はないと思います。
しかし、以下のような方は注意が必要です。
血糖値を下げる薬を飲んでいる人
インスリンや血糖降下剤を飲んでいる場合は、血糖値になんらかの影響を与え、低血糖や過剰摂取(薬+難消化性デキストリン)による症状などが起きる可能性があります。
血糖値関係だけでなく薬を服用されている方は、事前に医師に相談しましょう。
アレルギーのある人
市販されている難消化性デキストリンには、「小麦由来」のものと「トウモロコシ由来」のものがあります。
小麦やトウモロコシにアレルギーがある人は注意が必要です。
妊婦・授乳婦、小児
今までに健康被害は報告はないようですが、一方で安全性に関して信頼できる十分な情報もありません。
デリケートな時期です。
摂取したい場合は必ず医師に確認をとってからにしましょう。
気をつけたいこと・危険性
難消化性デキストリンは、小麦やとうもろこしなどを原料としています。
小麦やとうもろこしといえば、遺伝子組み換えが行われているものもある食品として有名です。
遺伝子組み換え食品とは、人工的に遺伝子組み替えが行われたものですが、今、様々な問題が起こっています。
なかでも気になるのが「健康被害がある可能性が高い」という点です。
・アトピー
・アレルギー
・皮膚疾患
・ぜんそく
・腸疾患
・自閉症
・がん
また、遺伝子組み換え食品は農薬などを使用して作られることから、健康被害の可能性が高まるのではないかと懸念されます。
今後どのような影響が体に現れるかわからないので、できれば避けたい遺伝子組み換え食品。
特保商品として販売されている場合、気になる方はメーカーに直接確認してみると安心です。
また「難消化性デキストリン」は特保商品としてだけでなく、Amazonや楽天などでそのもの単体で販売されています。
このような商品を利用する場合、商品説明に「遺伝子組み換え原料を使用していない」と記載されているものを選ばれることをお勧めします。
まとめ
難消化性デキストリンは、とうもろこしなどから作られた水溶性の食物繊維です。
自然由来のものなので、その安全性は高く、過剰摂取をしなければ副作用の心配がなく、安心して食べることができます。
さらに難消化性デキストリンには、整腸作用や食後血糖の上昇を緩やかにする効果があり、消費者庁長官が許可する特定保健用食品(トクホ)の関与成分として使用されています。
特に糖尿病の方や予備群、血糖値が気になる人にとって、特に「糖の吸収を穏やかにする」働きはうれしい効果です。
このように科学的なエビデンスがありますが、決して「魔法の粉」ではありません。
たくさん摂ったからといって、病気が治ったり、さらに健康が増進されたりするものではないです。
健康のためには適量を続けることが大切です。