酸素や栄養素を血液中に取り入れて全身に運ぶ役割りをしているのが動脈です。
動脈硬化になると、動脈の壁が厚くなり、弾力性・柔軟性が失われ、機能が衰えていきます。
さらに進行すると、血管の内膜にコレステロールやカルシウムなどが溜まって血管を狭め、詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかる重篤な病気を引き起こす危険性が高まります。
動脈硬化は糖尿病のごくごく初期の段階でも発生率が高いため、日ごろからの予防が大切です。
目次
どんな病気?
動脈硬化とは、動脈の血管壁が弾力性を失い、破れやすく、また詰まりやすくなった状態のこと。
加齢によって誰でも起きてくるものですが、糖尿病、さらに合併症で高血圧や高脂血症などがあると、それを助長します。
動脈硬化そのものには自覚症状がありませんが、放置していると、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などの重篤な病気を起こすリスクが高くなり大変危険です。
-要因チェック-
該当するものにチェックしてみましょう。
□ 加齢が進んでいる(男性45歳以上、女性55歳以上)。
□ 血糖コントロールが安定していない。
□ 喫煙習慣がある。
□ 肥満である。
□ 高コレステロール血症である。
□ 低HDLコレステロール血症である。
□ 高血圧である。
□ 動脈硬化性疾患(脳梗塞や心筋梗塞、狭心症)の家族歴がある。
□ 運動不足である。
□ ストレスが溜まっている。
□ 疲労が続いている。
該当項目が1つでもあれば要注意です。
動脈硬化発症の危険性が高くなります。
5つの危険因子
動脈硬化の原因は一つではありません。
その中で特に危険とされる5つの要因があります。
高血圧
血圧が高いと動脈に強い圧力がかかり続けます。
すると血管は高血圧に耐えるために血管の壁を硬く厚く、狭くしてしまいます。
高血圧は、細い動脈の硬化を促すだけでなく、より太い動脈の硬化を進める重大な危険因子です。
高脂血症
コレステロール値で問題になるのは、LDL(悪玉)コレステロールです。
LDLコレステロールは、肝臓で合成されたコレステロールを全身の細胞に運びます。
そのため過剰になる(LDL(悪玉)コレステロール値が高い)と、血管の内側にコレステロールのコブができやすくなり、血液の流れを悪くしてしまいます(動脈硬化)。
喫煙
タバコには有害物質、発がん物質がたくさん含まれていますが、その中の一つ、ニコチンは、末梢血管収縮、血圧上昇、心拍増加などの作用がある物質で、心臓や血管に障害をもたらします。
同じく問題となる一酸化炭素は、血液中で酸素の運搬役を担っているヘモグロビンと結合しやすく、血液の酸素運搬力を低下させます。
ニコチンと一酸化炭素の複合的な作用から、動脈硬化を促進させます。
また、喫煙は悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させるなどの作用もあり、動脈硬化を進める要因になります。
肥満
肥満、特に内臓脂肪が蓄積していると、血液中の中性脂肪やブドウ糖が増えるとともに、脂肪細胞から分泌される血管壁を正常に保つ役割を持つ物質(アディポネクチン)の量が減ってしまいます。そのため、動脈硬化の発症・進行を招くことに。
また、蓄積された過剰な内臓脂肪から分泌されるアンジオテンシノーゲンという物質は、血管を収縮させる作用を持っているため、高血圧を起こしてしまいます。
糖尿病
増えすぎた血液中のブドウ糖が、血管にダメージを与えます。
血管は全身をくまなく巡っているので、その影響は全身に及び、糖尿病でない人と比べ、首の動脈の肥厚、脳血管障害、虚血性心臓病、大動脈硬化、足の閉塞性動脈硬化症などのリスクが高いです。
肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧は、それ単独で動脈硬化の促進因子となりますが、それらが複数合併すると、動脈硬化は急速に進んでしまいます。
動脈硬化の促進要因として加齢など、どうしようもできないものもありますが、生活習慣によって悪化させてしまうことも多くあります。
それらを改善することで進行を抑制することができます。
一口メモ:糖尿病の初期からリスクが高い 糖尿病の合併症の発症率とHbA1cの値の関係を見ると、細小血管障害である糖尿病腎性や網膜症は、HbA1cが8%を超えると急に発症率が高くなります。
しかし、動脈硬化のような大血管障害は、HbA1cが6.5~7.0%という比較的正常に近い値でも発生率が高いです。
糖尿病の人はもちろんですが、予備群の人でもリスクが高いので注意が必要です。生活を改善し、予防、進行の抑制を心がけましょう。
検査
自覚症状のない動脈硬化を調べるためには、検査を受けることが大切です。
主な検査
- 脈圧
収縮期血圧と拡張期血圧の差を「脈圧」といいますが、脈圧が大きくなってきた場合は、動脈硬化が進んでいることを表します。 - 動脈超音波検査
首の左右にある頚動脈の内部を、超音波で画像に映し出し、頚動脈の状態を調べます。この検査では、プラークの大きさや状態などがわかります。 - 脈波伝搬速度検査
心臓の拍動が手足の動脈に伝わる速度を調べる検査。
左右の上腕と足首にカフを巻き、体に心電図の電極を装着して行います。 - 心臓CT検査
造影剤を注入し、冠動脈を調べる検査。 - MRA(時期共鳴血管画像)
脳の血管を調べる検査。
治療法
動脈硬化の治療法は、血流をよくする薬による治療や、血管の中にステントと呼ばれる網目状の筒を入れる処置、詰まった血管とは別のルートを新設するバイパス手術などがあります。
しかし動脈硬化は、全身の血管のあちこちで起こっているのが通常なので、1ヶ所の血管の詰まりは氷山の一角に過ぎません。
予防するためには?
糖尿病患者の心筋梗塞のリスクは、そうでない人の3倍以上、脳梗塞では2~4倍です。
さらに内臓脂肪型肥満、脂質異常症、高血圧、喫煙が加わると、そのリスクは複合的に高まります。
動脈硬化予防のために
- 血糖
- 血圧
- 脂質
- 体重
- 禁煙
これらのコントロールを総合的に行うことが予防の基本です。
まとめ
動脈硬化は、動脈血管の内側にプラークと呼ばれる脂肪やコレステロールの塊ができ、血液の通り道が細くなってくる状態です。
進行すると、血管がプラークで塞がったり、プラークが破れてできた血栓が脳などのほかの場所に流れていって細い血管を詰まらせ、脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こす原因になります。
糖尿病の人は動脈硬化が起こりやすく、悪化しやすいので、予防を十分に行うことが大切です。
コレステロールを上げる動物性脂肪や血圧を上げる塩分の摂り過ぎに注意し、喫煙、ストレス、疲労など、危険因子をできるだけ避けるようにしましょう。