糖尿病で血糖コントロールが悪いと認知機能が低下しやすくなり、認知症を発症したり、進行させやすくなります。
アルツハイマー型認知症や血管性認知症のリスクは、健康な人の2~4倍であることが知られています。
認知症になると、本人による血糖コントロールや薬の管理などが難しくなるため、日々の食事や生活はもちろん、糖尿病治療のための薬物療法を正しく行うためにも介護が必要になります。
目次
原因
血糖コントロール不良や、血糖値の変動が大きな要因になると考えられています。
高血糖も重症の低血糖も、どちらも認知機能の低下や認知症の発症に大きく関係しています。
さらに、糖尿病は高血圧や脂質異常症などを併発しやすく、動脈硬化の危険因子も認知機能の低下に関係しているといわれています。
症状
認知症にも種類があり、糖尿病と主に関係しているのが「血管性認知症」と「アルツハイマー型認知症」です。
血管性認知症
脳の血管障害によって起こる認知症です。
脳の血管が詰まったり、破れたりすると、その周りの神経細胞がダメージを受け、脳の機能が低下していきます。
=症状例=
- 料理の手順がわからなくなる。
- 今まで問題がなかったリモコン操作ができなくなる。
- 気力がなくなる。
アルツハイマー型認知症
神経細胞が壊れ、脳が萎縮していく病気。
アミロイドβという老廃物が、神経細胞に蓄積することから始まるといわれています。
アミロイドβがたまると神経細胞が障害されるため、神経細胞間のネットワークがうまくいかなくなり、記憶障害が起こると考えられており、その後、神経細胞の骨格を担うタウたんぱくが凝集して、さらに神経細胞を障害していきます。
=症状例=
- 物忘れをする。
- 同じ質問を何度も繰り返す。
さらに進行すると、
- 家族や友人、知人がわからなくなる。
- 自分のいる場所がわからなくなる。
- 一人で買い物ができなくなる。
- 感情の起伏が激しくなる。
糖尿病と認知症を合併している人は、血糖コントロールがよくない人ほど認知症の症状が強く現れているという研究もあります。
糖尿病と認知症の悪循環の関係とは?
糖尿病と認知症は互いに影響しあい、
糖尿病→認知症→糖尿病
といった悪循環を起こします。
血糖値コントロールが悪く、認知機能の低下や認知症を発症すると、
- 食事療法が難しくなる。
- 運動療法が難しくなる。
- 薬の管理ができなくなる。
- 低血糖への対処ができない。
など、自己管理が難しくなり、ますます血糖コントロールができず、糖尿病を進行させてしまいます。
糖尿病が進行すると、さらに認知症が悪化してしまう・・・。悪循環しかありません。
予防法
糖尿病があると認知症になりやすくなります。
認知症になると、糖尿病の治療が難しくなり、血糖コントロールがさらに悪化。糖尿病、認知症ともに進行してしまいます。
認知症を起こさないためには、安定した血糖コントロールを保つことが大切です。
血糖コントロールを良好に保つ。
糖尿病の治療をしっかり行って血糖値をコントロールし、糖尿病が進行しないようにする。
低血糖を起こさない。
低血糖を繰り返すと認知機能の低下につながります。特に重症の低血糖は、1回起こすだけでも認知症を発症することがあります。
動脈硬化を予防・改善する。
動脈硬化の危険因子も認知機能の低下に関係していると考えられます。糖尿病の治療とあわせ、高血圧や脂質異常症など、動脈硬化の危険因子を減らす、治療することが大切です。
早期発見のポイント
「あれ?最近ちょっと変かな?」
そんなことはありませんか?
もしかしたら認知症のサインかもしれません。
早期発見のための「気づきポイント」を紹介します。
◆生活に必要なことができているか?
□ 朝ごはんのメニューを思い出せないことがある。
□ 同じものを買ってきてしまうことが多くなった。
□ 財布を盗まれたと言う。
□ 今までできていた家事や計算、運転などのミスが多くなった。
□ 行き慣れた場所や道で迷うことがある。
□ 外出時、何度も持ち物などを確認するようになった。
□ 物の名前や人の名前が思いだせないことが多い。
□ 約束の日時・場所などを間違えたり、忘れるようになった。
□ おしゃれや身だしなみに関心がなくなってきた。だらしなくなった。
□ 外出など何をするにもおっくうになり、家にいることが多くなった。
□ ささいなことでイライラしたり、怒りっぽくなった。
「もしかしたら?」と思ったら
認知症の予備群(軽度認知障害(MCI))の段階で適切な対策が取れれば、認知症の進行を防いだり、遅らせたりできる可能性があります。
認知症:認知機能が低下し、日常生活に影響がでている状態
MCI:認知機能は低下しているが、日常生活には影響がでていない状態
-軽度認知障害(MCI)チェックポイント-
□ 「あれ」「それ」などの代名詞を使って話すことが増え、知っているはずの人や物の名前が出てこなくなった。
□ 最近の出来事を忘れることがある。
□ めんどくさがったり、好きだったことをするの嫌がったり、積極性がなくなってきた。
□ 以前と異なり、会話のキャッチボールができにくくなってきた。
□ 約束を忘れる。
□ 段取りが悪くなり、例えば料理に時間がかかるようになってきた。
※「軽度認知障害(MCI)」か「軽度アルツハイマー型認知症」か区別できないこともあります。
認知機能はトレーニングにより鍛えることができ、健常な状態への回復が見込めます。
気になることがあれば、またご家族の方や身近にいる方が患者さんに認知機能の低下が見られたら、まず糖尿病の担当医に相談しましょう。
サインを見逃さないことが大切です。
まとめ
糖尿病が怖いのは、合併症を引き起こすこと。
血糖値が高い状態が長く続くと、全身の様々な場所で合併症が現れます。
認知症もその一つ。
糖尿病で血糖コントロールが悪いと認知機能が低下しやすくなり、認知症を発症したり、進行させやすくなります。
認知機能の低下や認知症の発症は、さらに糖尿病の治療を難しくし、血糖コントロールができず、糖尿病をさらに進行させるという悪循環が生まれます。
認知症予防には、血糖コントロールがカギ!
しっかりコントロールするとともに、「あれ、おかしいな?」と思ったらすぐに糖尿病の担当医に相談しましょう。