糖尿病治療に欠かせない運動の必要性とは?

糖尿病の治療では、食事療法と運動療法をバランスよく行うと効果がいっそう高まります。

糖尿病の悪循環を打ち切り、糖代謝の活発な体を作るには運動は欠かせません。

目次

目的

運動不足の人は体内に糖がたまりやすくなり、その結果、血糖値が高くなり糖尿病になりやすくなります。

オフィスワークなどで運動をする機会がない人や運動嫌いな人は注意が必要です。

また、長く運動をしていたけれど、生活習慣の変化などで運動量が減ったにもかかわらず、摂取する食事の量は変わらないという人も注意しましょう。

糖尿病の人は、ブドウ糖がうまく代謝できません。

その上に肥満があると、脂肪細胞からインスリン抵抗性を引き起こす物質が出てきます。これにさらに運動不足が加わると、消費されないブドウ糖が中性脂肪に変えられ内臓脂肪などとして蓄積。ますます肥満度を高め、糖尿病を進行させてしまいます。

この悪循環を断ち切るためには、食事療法だけではできません。

ということで、糖尿病の運動療法の主な目的です。

血糖値を下げる

運動をはじめると、まず、筋肉に蓄えられているグリコーゲンがエネルギー源として使われ、15~20分で血液中のブドウ糖が、さらに続けると、内臓脂肪がエネルギーとして使われます。

運動によって骨格筋に取り込まれる血液中のブドウ糖が増加するため、血糖値が下がります。

減量・痩せる

消費エネルギーが増えることで、肥満の解消につながります。すると、脂肪細胞が出していたインスリンの働きを阻害する物質が減り、血糖も下がります。

病気の予防効果

運動は心肺機能をよくし、高血圧や脂質異常症なども改善します

自分の体に見合った体重になれば、脂肪細胞が正常化し、インスリン抵抗性を引き起こす物質がでなくなります。また、質のいい筋肉が増えると、基礎代謝が上がり、筋肉内の糖代謝も活発化します。

効果

定期的な運動は、インスリンの働きをよくするだけでなく、様々な効果をもたらします。

主な効果

  • 血糖値が下がる
  • インスリンの働きがよくなる
  • 内臓脂肪の減少
  • 血圧が下がる
  • 体力、筋力がつく
  • 心臓や肺の機能が高まる
  • 血液中の中性脂肪や悪玉コレステロール(LDL)を減少させ、善玉コレステロール(HDL)を増加させる
  • 骨が強くなる、骨粗しょう症の予防
  • ストレスの解消
  • 老化の防止

運動をすると糖代謝がよくなり、体内にたまっていた糖が筋肉の中で消費され、血糖値が下がります。

また、食事療法だけでは筋肉が落ちてしまいがちですが、運動をすることで防ぐこともできます。

どんな運動が効果的?

運動にはいろいろなタイプがあり、それぞれ体にかかる負荷の強さが異なります。

理想的には、

有酸素運動 + 筋トレ +ストレッチング

を組み合わせて行うのが、いちばん運動療法の効果がアップします。

有酸素運動:脂肪を効率よく燃焼させ、体脂肪を減らす

酸素を取り込みながら、軽く汗ばむ程度で行う運動です。話しながら行える強さが目安。

糖代謝を促すGLUT4や善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす効果もあります。

筋トレ:筋肉に負荷をかけ、質のよい筋肉を増やす

質のよい筋肉が増えると、筋力や基礎代謝量が向上し、余分な脂肪がつきにくくなります。GLUT4も活性化。

毎日行うより1日おきのほうが効果的です。

ストレッチング:筋肉にたまった疲れをとり、運動効果を上げる

運動や日常生活の動作により疲れた筋肉を伸ばし、疲労物質の排出を促します。

1ヶ所の筋肉を20秒間、呼吸を止めず、ゆったり行うのが基本です。

しかしこれまで運動する習慣がなかった人や、どのような運動をしたらよいか迷っている人は、全身運動を行う有酸素運動をしましょう。

有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などがあります。

その中でおすすめはウォーキング。

体力があるなしに関わらず、特別な用具も使わず、1人でもできる運動だからです。

1回で長い時間歩けなくても、1日10分×3階でもOK。

その日の体調に合わせて歩く長さ、速さを調節することも簡単です。

運動が苦手、運動習慣がない人は

運動が苦手、運動習慣がない人は、毎日の活動度を高めることから始めましょう。

□ 移動は車や自転車などを使わず、できるだけ歩いて移動する。

□ 積極的に家事をする。

□ 外出先では、エスカレーターやエレベータを使わず、階段を利用する。

□ 毎日、外出する。

□ 電車に乗るときは、できるだけ座らないようにする。

□ できるだけ座らず、立ってできることは立ってする。

運動習慣がない人の場合、1日のうちにいつかやろうと思っていたらできません。

後で後でと気づいたら夜に。もう遅いから明日に。そして明日になっても、後でやろう・・・。

いつまで経っても結局できません。

そう、まさに私のことです。

そんな私ですが、父の食後血糖値に数値を見ているとさすがに怖くなり、運動といえるものではないですが、いくつかはじめました。

私は電車通勤しているのですが、空いている区間があるので、必ず○○駅から○○駅までの区間の間は、行き帰りとも、かかとを上げ、膝を少し曲げた状態をキープすることと、寝る前にマウスウォッシュをするのですが、その時にかかとの上げ下げをすることを決めました。

「いつかする」のではなく、「具体的にいつ何をするか」を決め、意識して習慣化させていくことが大事だと思います。

内容はとても運動と呼べるほどのものではありませんが、運動習慣がなかった人にとってはできることを習慣化していくことが何より大事です。

今は、2階分の上り下りは基本階段を使うようにしていることと、歩く時は早歩きをすることを加えました。今まで10分かかっていたところを8分~8分半ほどで歩くなど、とにかく息が切れない程度にはやく歩くようにしています。

この程度ですが、続けていくうちに以前に比べて確実に体力はついてきています。

なにより結構ちょこちょこ動くようになりましたね。以前はお尻が重くて(^^;、座ったらなかなか動くのがイヤだったんですけど。

ほんとは30分ウォーキングとかできればいいんだろうなと思いますが、まだ時間をとって運動するというところまでは・・・。きっとやってもその日1日だけ。後が続かないと思います。

これが一番ダメなパターン!

私と同じく運動習慣がない人や運動っていうだけで億劫になる方は、とにかく食後その場足踏み(膝を直角になるまで上げる)を50回するとか、椅子や机に手を置き、スロースクワット5回など、できるものでいいので、それをいつするか具体的に決めて、意識して続け、習慣化させることが大切です。

そして続けられるようになったら、少しずつ運動を増やしていくといいのではないでしょうか。

続けることが大事です。

いきなり激しい運動は危険!

糖尿病治療に運動がよいとはいえ、今まで体を動かしていなかった人が急に激しい運動をするのは危険。糖尿病の人は、治療開始直後であっても動脈硬化がすでに生じていることがあるからです。

このような人が急に心臓に負担がかかるような激しい運動をすると、心臓発作の危険性も出てきてしまいます。「ウォーキングなら大丈夫」と思っていても、膝や腰に思わぬ負担をかけてしまい、怪我を引き起こすことも。

まずは様子を見ながら活動量を増やし、楽しんで続けられる運動をしましょう。

良好な血糖コントロールのためには運動は欠かせませんが、例えばぶらぶら歩くだけでは気晴らし程度で、運動にはなりません。大切なのは、強すぎず弱すぎず、自分の身体強度にあった運動をすることです。そこで、自分の体に合う強さをチェックする方法などを紹介します。

運動療法ができない人とは?

合併症のある人は、運動の量や種類について制限がある場合があります。

運動療法を禁止または制限する人

  • 空腹時血糖値が250㎎/dL以上ある
  • 尿のケトン体が陽性である
  • 前増殖網膜症以上の網膜症がある
  • 腎症のため血清クレアチニン値が男性2.5㎎/dL、女性2.0㎎/dL以上の人
  • 神経障害、閉塞性動脈硬化症がある人
  • 心臓や肺の病気、著しい高血圧などがある

避けたほうがよい主な理由

  • 血糖コントロールがよくない人は、運動をすることによりかえってそれを増幅させる恐れがあるため
  • 糖尿病腎症のある人が運動をすると、傷んでいる腎臓の細い血管に負担がかかりすぎ、いっそうの腎機能低下を招く恐れがあるため
  • 糖尿病網膜症で眼底出血を起こしている人が運動をすると、出血を助長させる恐れがあるため
  • 動脈硬化が進んでいる人が運動をすると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を誘発する恐れがあるため

体の状態によっては、かえって運動をすることで命に関わることもあります。
運動をはじめる前に必ず医師に確認しましょう。

一口メモ:運動をはじめる前に医師に相談を! 症状によっては、運動がかえって害を及ぼしてしまうことがあります。

インスリンが顕著に欠乏する糖尿病の場合、運動後に血糖値の上昇を招くことがあり、これでは病気治療に対し逆効果になってしまいます。また、合併症のある人はその状態によって悪影響を及ぼします。

運動をはじめる前に、必ず医師に相談しましょう。

まとめ

運動療法は、食事療法と並んで糖尿病治療の基本です。

糖代謝の活発な質のいい筋肉を作るには運動は欠かせません。運動を少しずつでも長く続けるのが効果的です。

特に合併症がなく、運動の強度や時間などに制限のない人は、積極的に体を動かすことで効果が上がります。

1日30分以上、1週間に3回以上の運動を目標にしましょう。

いくつかのタイプの運動を組み合わせるのが理想的ですが、何か一つはじめるのなら有酸素運動。中でも手軽に行えるウォーキングがおすすめ。30分以上、週3回以上を目標に行いましょう。

また、今まで運動する習慣がなかった人は、まずは普段より1000歩多く歩くよう心がけるところから始めましょう。