ヘモグロビンA1c(HbA1c)って何?血糖値との違いは?

糖尿病は血糖値に深く関係している病気です。

糖尿病治療では、定期的に通院し、血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)などを検査し、血糖コントロールの様子を調べます。

そのため、血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)は糖尿病の治療において欠かせない数値です。

そこで、糖尿病の治療で大事な「血糖値」と「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」の2つの検査値について見ていきたいと思います。

目次

ヘモグロビンA1c(HbA1c)って何?

ヘモグロビンは、赤血球内のたんぱく質の一種です。

通常、赤血球の平均寿命は120日といわれ、その間、赤血球は血管の中を循環し、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。

またヘモグロビンには、血液中の糖と結合(糖化)する性質を持っており、体内を循環しながらブドウ糖とくっついていきます。

そこで登場するのが、「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」。「ヘモグロビンエーワンシー」と読みます。

「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」は、血液のなかでヘモグロビンとブドウ糖が結合したもので、過去1~2ヶ月間の血糖値の状態がわかる値です。

この数値が高いほど、ヘモグロビンに結合したブドウ糖が多いということ。

つまり「血液中にブドウ糖が多い=高血糖」であるということです。

一度ヘモグロビンとブドウ糖がくっつくと、赤血球の寿命が尽きるまで離れることはありません。

HbA1cでなぜ過去1~2ヶ月の血糖値状態がわかるの?

赤血球の寿命はおよそ120日です。

それじゃ、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の値は、1~2ヶ月でなく、4ヶ月の血糖値状態がわかるんじゃないの?と思われる方もいらっしゃると思います。

確かに赤血球の寿命は120日なのですが、しかし、骨髄で産出された赤血球は4ヶ月ごとに一斉に切り替わるわけではありません。

赤血球は、血液1μL中に男性は約500万個、女性は約450万個あり、体内に20兆個あります。この内、1日に約250万個の赤血球がなくなり、これと同数の赤血球が新たに産み出され、体内を循環します。

つまり、血液検査した時点の3~4ヶ月前の赤血球は全体の10%程度しか残っていません。

そのため、ヘモグロビンA1c(HbA1c)はおよそ1~2ヶ月の血糖値を反映する値になっています。

血糖値とヘモグロビンA1c(HbA1c)の違いは?

血糖値とヘモグロビンA1c(HbA1c)は、調べる血糖状態のポイントに違いがあります。

  • 血糖値・・・血液検査をした時点での血糖状態を表すものです。
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c)・・・過去1~2か月の血糖状態を表すものです。

-血糖値とヘモグロビンA1c(HbA1c)の違い-

血糖値 ヘモグロビンA1c(HbA1c)
調べる値 血液中のブドウ糖の量  過去2ヶ月間の血糖値の平均
単位 mg/dL
(ミリグラム パー デシリットル)
%(パーセント)
変動 1日の中で値が変動する 検査前の食事などで変動しない
検査法 病院の血液検査
血糖測定器を使って自分で測定する
病院の血液検査
糖尿病の判断基準 空腹時血糖値:126mg/dL以上
※110~125mg/dLは「境界型」(糖尿病予備群)随時血糖値、ブドウ糖負荷後2時間:200mg/dL以上
6.5%以上

血糖コントロールの目標には、ヘモグロビンA1cが用いられます。

例えば血液検査で、前回の検査時よりも血糖値は下がっていたけれど、ヘモグロビンA1c(HbA1c)は上がっていたということがあります。

これは、たまたまその時の血糖状態が良かったというだけで、全体としての血糖状態は悪くなっているということです。

検査した時の値がわかる血糖値とは異なり、ヘモグロビンA1c(HbA1c)はその日や数日前程度気をつけても意味はありません。1~2ヶ月に渡ってどう過ごしていたかわかる値です。

血糖値とヘモグロビンA1cの見方

糖尿病の治療では、定期的に通院して血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)などを調べ、日常は自己血糖測定器を使って自分で血糖値を測定します。

血糖値の数値の見方

病院の検査だけでなく、自己血糖測定器を使えば自分で測定することができます。

血糖値は、常に変動しています。起床後、食事の前後、服薬の前後、運動の前後、就寝前など、いろんなタイミングで測っておくと自分の血糖状態を把握することができます。

「これを食べると高くなる」「これは食べてもあまり上がらない」「睡眠不足が原因かも?血糖値が上がっている」「運動効果で血糖値が下がった」など、どんな食べ物を食べると上がり、食べても大丈夫な物は何か、どんな食べ方をするといいか、この運動は血糖値を下げるのに効果的など、どんなものが血糖コントロールによいかがわかってきます。

ちなみに、誰でも例えば食事をすると血糖値は上がりますが、正常な人の場合、140mg/dLを超えることはありません。

その他、低血糖や体調不良の日の対策にも役立ちます。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)の数値の見方

ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映する数値で、血糖値のように短期間では大きな変動はありません。

正常型 5.6%未満
正常型(高め) 5.6%~5.9%
境界型 6.0%~6.4%
糖尿病型 6.5%以上

例えば1~2ヶ月おきに通院している場合は、この値の変化から、「うまく血糖コントロールができている」「悪化している」といった傾向が読み取れます。

悪化している場合は血糖コントロールがうまくいっていないわけなので、その原因を探り、対策を考え、改善が必要になります。

※健康診断で、「空腹時血糖値」と「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」の両方の値が糖尿病型の場合は糖尿病と診断されますが、どちらかが糖尿病型でなかった場合は、再検査で様々な検査や危険因子はどの程度かなどを考慮し、総合的に見て診断されます。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)の値だけで、糖尿病かどうか判断されわけではありません。

一口メモ:2012年からJDS値からNGSP値に!ヘモグロビンA1c(HbA1c)の判定値は、日本では以前、「JDS値」が使われていました。

しかし、2012年から国際標準値の「NGSP値」が使用されるようになりました。

NGSP値は、JDS値に0.4%を加えたものになります。

以前から治療を受けている方にとっては、診断の数値が緩くなったと感じる方もおられるかもしれませんが、そうではないので注意しましょう。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)が高くなる原因は?

HbA1cの値が高くなる原因は、血液中にブドウ糖がたくさんあるからです。

  • 炭水化物(糖質)ばかり食べている。
  • 甘いものが好き!スイーツやケーキは別腹♪
  • 運動は嫌い。動くのがイヤ。
  • 朝はお腹が空かないのでパス。そのかわり夜ガッツリ食べる。
  • 夜食を食べる。
  • 不規則な食事や生活習慣である。
  • ストレスフルである。

通常、食事をし、血糖値が上がると、すい臓からインスリンが出て血糖値を下げます。

しかし糖尿病になると、インスリンの分泌量が減ったり、うまく働かなくなったりして、糖代謝がうまくいかなくなってしまいます。

糖代謝がうまくいかなくなると、行き場を失ったブドウ糖が血液中にあふれ、血糖値の高い状態が続いてしまいます。

高血糖が続く理由

  • すい臓
    インスリンが分泌されにくい。分泌されない。
  • 筋肉・肝臓など
    筋肉や肝臓などにブドウ糖をうまく取り込めず、血液中にブドウ糖が増えてしまう。

高血糖の状態が長く続くと、血管がダメージを受け、様々な合併症を引き起こします。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)を下げるには?

ヘモグロビンA1c(HbA1c)を下げるには、日々の食生活、生活習慣の改善が必要です。

糖質を控える

血糖値を上げる食べ物は糖質です。

そのため、糖質の摂り方が重要です。

ポイントは、

  • 糖質の量を減らす。
  • いきなり糖質を含んだ食べ物を口にしない。
  • 食物繊維やたんぱく質などをしっかり食べた後、できるだけ後に食べる。

3食の食事はもちろん、間食、飲み物などにも注意しましょう。

ゆっくり食べる

時間をかけゆっくり食べることで、胃や腸での消化・吸収に時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになります。

理想は20分以上。

よく噛んで、ゆっくり食べましょう。

ちなみに、「満腹」を決めるのは、実は”胃”ではなく”脳”です。10分くらいで食べ終えてしまうと、脳は「満腹」を感じることができません。

時間をかけて食べることで満腹が得られ、食べすぎも防ぐことができます。

食後15~20分運動をする

血糖値は食べた直後から上昇します。

できるだけ食べた直後から15~20分を目安に運動しましょう。

運動といっても、掃除などの家事でもOKです。ウォーキング、簡単なストレッチ、足踏み、掃除などとにかく体を動かしましょう。

定期的な運動

食べた直後からの15~20分の運動は、食後に急上昇する血糖値を抑えるのに役立ちます。

それだけでなく、体を動かすこと、運動することで内臓脂肪が減ったり、肥満が解消したり。質のいい筋肉が増えると、糖代謝の活発な身体を作ることができます。そうすると、インスリンの働きがよくなり、血糖値が下がりやすくなります。

さらに運動には、血圧を下げたり、善玉コレステロールが増えたり、心肺機能を高めたり、ストレス解消など、様々な効果が期待できます。

糖尿病の悪循環を打ち切り、糖代謝の活発な体を作るには運動は欠かせません。運動をする目的、それに伴う効果、どんな運動が効果的かなど、運動の必要性について詳しく紹介します。

生活習慣の改善

睡眠不足やストレスが多い、朝食を抜く、喫煙など、不規則な生活は血糖値を上げる要因になります。

リラックスタイムを設けたり、禁煙したり、少しずつでも改善していきまましょう。

まとめ

糖尿病は血糖値に深く関係している病気です。

そのため、血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)は糖尿病の治療において欠かせない数値です。

血糖値とヘモグロビンA1c(HbA1c)の違いは、調べる血糖状態のポイント。

  • 血糖値・・・血液検査をした時点での血糖状態を表すものです。
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c)・・・過去1~2か月の血糖状態を表すものです。

どちらも血糖コントロールを行う上で重要な値です。

どういった食事をしたり、運動をしたり、生活習慣をすると、血糖値が上がるか下がるかを自己血糖測定器でチェックしながら、全体の血糖コントロールがうまくいっているかどうかをヘモグロビンA1c(HbA1c)で確認し、今後の治療に役立てていきましょう。