末梢神経の機能が正常であれば、怪我をすると痛みを感じ、治療を適切に行われます。
しかし、糖尿病神経障害があるとその機能が損なわれ、痛みを感じなくなることがあります。
痛みがなければ、怪我したことに気づかなかったり、気づいたとしても「大したことない、大丈夫」と放置したりしてしまいます。
糖尿病の足病変(合併症)は、足の小さな傷など、炎症がきっかけとなって起こります。
糖尿病があると、体の抵抗力が弱くなるため、菌が繁殖しやすくなり、また治りにくく、悪化しやすくなります。
そのため壊疽してしまうこともあり、最悪、切断しなければならない事態に。
糖尿病では、足のケアがとても大切です。
目次
まずよく観察してみよう!
足の病変は以下のような人によく見られます。
まず、チェックしてみましょう。
-足病変(合併症)を起こしやすいかチェック-
□ 糖尿病歴が長い。
□ 血糖コントロールがいつも良くない。
□ 神経障害がある。
□ 血流障害がある。動脈硬化が進んでいる。
□ 進行した網膜症がある。
□ 腎臓障害がある。
□ 外反母趾など、足の骨格が変形している。
□ 靴擦れを起こしやすい。
□ タコやウオノメができやすい。
□ 糖尿病治療を中断した。
□ 男性である。
該当する数が多いほど、足の病変を起こしやすくなります。
しかし、たった1つでもあれば、足の病変が起こる恐れがあるので注意が必要です。
発症すると治療は簡単ではなく、切断を余儀なくされることもあるので、十分に注意しましょう。
フットケアの習慣は必須!
毎日の習慣にしたいのが、足のチェックです。
当てはまる項目にチェックしましょう。
-足の状態チェックポイント-
□ タコやウオノメができている。
□ 水虫ができている。
□ 爪が厚く変形している。
□ 足が乾燥してひび割れができている。
□ 傷ができている。できた傷が治りにくい。
□ 靴擦れができている。
□ 皮膚の色が変化している。
□ 悪臭がする。
□ 足が冷たい。しびれたような痛みがある。
□ 感覚が鈍くなっている。痛みを感じない。
足に病変があるということは、血管系のほかの病気の発症の可能性もあります。
また、もし傷や腫れがあるのに気づかない場合は、神経障害で感覚が鈍くなっている可能性があります。
何か異常があれば、どんなに小さくても、痛みがなくても、必ず病院で診てもらいましょう。
予防法
予防するには、まず、きちんと血糖をコントロールすることが大切です。
それとともに、日々の徹底的なフットケアが重要です。
- 血糖コントロールを厳格に行う。
- 足を毎日丁寧に洗い、しっかりと乾燥させる。
- 足を毎日こまめに観察する。
- 足に怪我や炎症が起きたら、応急処置をしたうえで早めに医師の診察を受ける。
- 足を温かく保つ(ただし、糖尿病の人は熱さを感じにくくなっている場合があるので、あんかやカイロなどは避けましょう)。
- 裸足で歩かない。
- 靴を履く時は必ず靴下を履く。吸湿性の高い木綿やウールの靴下が最適。
- 自分の足に合った靴を選ぶ。靴擦れに注意!
- 爪を切る時は深爪に注意する(なるべく爪きりは使わず、やすりで。皮膚を傷つけないように注意しましょう)。
- タコやウオノメ、イボは自分で取らず、病院で治療してもらう。
- 素足にサンダル履きはしない。
- 定期的な通院の際に、主治医に足を診てもらう。
- 禁煙すること。
足病変を予防するためのポイント
いつも足を清潔に保つことがフットケアの基本です。
毎日、足を洗って清潔にすること。
水虫などの菌は、24時間以降から増殖します。1日1回洗えば、感染や悪化を防ぐことができます。
また石鹸で洗った後は、清潔なタオルで拭き、乾燥しないように保湿クリームを塗りましょう。
医療機関によっては、「糖尿病足外来(フットケア外来)」があるところもあり、専門スタッフが正しいフットケアの方法を教えてくれます。
治療法
足病変の原因は動脈硬化などの血管障害か神経障害かで変わるため、まず足の血管の狭窄や閉塞がないかどうかを調べます。
膿んでいるような場合は、抗生物質などを使って感染症の治療を行います。
血流障害の場合は、血管拡張薬や抗血小板薬、抗血栓薬などで対応。
薬物療法で対応できなければ、血管バイパス手術や血管形成手術などが行われることもあります。
潰瘍が重症であったり、壊死にいたっている場合は、外科的対応が中心になります。
まとめ
糖尿病になると、神経障害や血流障害などの合併症が起こりやすくなります。
神経障害があると、足に傷ができても気づかず、悪化してしまうことがあります。
傷ができても治りにくく、そのまま放置すると腐ってしまうこともあります。
神経障害によって感覚が鈍くなり、怪我に気づくのが遅れることも悪化させやすい原因の一つです。
- 神経障害による発見の遅れ。
- 高血糖のために感染症にかかりやすい。
- 血管障害のため傷の修復に時間がかかる。
- 病状が悪化しても自覚症状が少ない。
小さな傷が命取りです。
そんなことにならないよう、毎日のチェックとフットケアをしっかりと行いましょう。
また、足を使ってタオルをつかんだり、足を上げて膝の曲げ伸ばしをしたり、足の血行をよくする運動などを日常の生活習慣に取り入れることもおすすめです。