国糖尿病学会が発行する医学誌『Diabetes Care』に、「ピロリ菌に感染している人では、糖尿病の発症リスクが2.7倍に上昇するとの研究が発表」されています。
胃潰瘍や胃がんの原因になるピロリ菌。
糖尿病にも関わっていることがわかってきました。
詳しく見てみましょう。
目次
ピロリ菌と糖尿病の関係
米コロンビア大学のChristie Y. Jeon氏らの研究チームが、米カリフォルニア州に在住しているラテン系住民を対象に調査を行い、分析した結果、ピロリ菌に感染すると2型糖尿病のリスクが2.7倍になるという結果が得られました。
「腸内のピロリ菌による慢性的な感染症が炎症が引き起し、サイトカインという物質の分泌が促され、糖尿病の一因となっている可能性」があるのではないかといわれています。
ピロリ菌などの慢性的な感染症だけが原因ではありませんが、ビロリ菌も関わっていることが考えられます。
一口メモ:ピロリ菌を除菌して、糖尿病完治!?東北大学大学院医学系研究科の片桐秀樹教授、岡芳知教授の両氏らの研究チームが、ピロリ菌の除菌で、糖尿病の一種「B型インスリン抵抗症」が完治したことを医学誌『ランセット』で発表しています。
糖尿病のなかでもまれな疾患で、数千人から数万人に1人が発症するとみられる「B型インスリン抵抗症」。
ピロリ菌除去を行ったところ、インスリン受容体に対する抗体が消え、糖尿病の指標が正常になったとのことです。
ピロリ菌とは?
これまで酸性の強い胃の中には細菌はいないと考えられていましたが、1982年にオーストリアの医師によって発見されました。
約3ミクロンのらせん形の細菌で、一方の端に鞭毛(べんもう)と呼ばれる尾のようなものを持っています。この鞭毛を回転させて活発に動き回り、人の胃の粘膜や細胞の間に入り込んで炎症を起こします。
どのようにして感染するの?
昔、上下水道が十分普及していなかった時代には、生活用水として使われていた井戸水などから感染したと考えられます。そのため、60歳以上の日本人の80%の方が感染しているといわ
れています。
衛生環境が整った現代の感染率については、減少傾向にあります。
大人になってから感染する機会はほとんどないと考えられますが、ただし、免疫能力が不完全な幼少期に、ピロリ菌に感染している大人から幼児へ口移しで食べ物などを与えてしまうと
感染する恐れがあります。
一度感染してしまうと、除菌を行わない限り一生感染しづけてしまいます。
幼児に口移しは絶対
ピロリ菌が原因の病気
ピロリ菌に感染すると、ほとんどの人が自覚症状の少ない軽い胃炎を引き起こすことがわかっています。
そのままその状態を放置し、慢性胃炎が続くと、胃粘膜が萎縮する萎縮性胃炎や胃潰瘍、十二支潰瘍を引き起こすことがあります。
さらに胃がんの患者さんはピロリ菌の感染率が非常に高く、胃がんの発生にピロリ菌が関わっているのではないかと考えられます。
またピロリ菌は、特発性血小板減少性(ITP)や慢性蕁麻疹などの皮膚疾患、鉄欠乏症の貧血などにも影響を及ぼしているという報告もあり、近年には、糖尿病発症にも関わっていることが明らかになってきました。
ピロリ菌に感染したからといって、必ずこのような病気が起こるというわけではありませんが、様々な病気のリスクを高める要因になっています。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う検査と使わない検査があります。
内視鏡を使う検査
内視鏡により採取した胃の組織から、ピロリ菌がいるかどうか調べます。
内視鏡を使わない検査
尿素呼気試験
検査用の薬を飲み、一定時間経過した後に、吐き出した息(呼気)からピロリ菌に感染しているかどうか調べます。
抗体測定
血液や尿を採取し、ピロリ菌に対する抗体の有無を調べ、感染しているかどうか調べます。
便中抗原測定
便を採取し、ピロリ菌抗原があるかどうかを調べます。
それぞれ特徴があり、ピロリ菌の検査は、これらのうちいずれかを用いて行われます。
1つだけでなく複数の検査を行えば、より確かに判定できるとされ、最初の結果がはっきりしない場合は、複数の検査を行って判断する場合もあります。
自宅でできるピロリ菌検査とは?
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まとめ
胃や十二指腸潰瘍などの消化器系の病気に深く関わることが知られているピロリ菌。
しかし近年の研究で、糖尿病の発症にも関係していることがわかってきました。
ピロリ菌は感染してしまうと、除菌しない限り一生感染し続けてしまいます。
ぜひ一度感染していないか病院に、時間がなかなか取れない方は検査キットを活用し、チェックしてみてください。