糖尿病は動脈硬化を進行させます。
動脈硬化は全身のどこに現れてもおかしくなく、どこで障害が起こるかわかりません。
脳の血管が動脈硬化を起こし、詰まったり、出血したりすると脳卒中(脳梗塞、脳出血など)を発症します。糖尿病が基礎にあると、発症率は3~4倍にもなります。
命にもかかわり、助かったとしても重い障害が残ることが多い病気です。
病気のリスクを低くするためにも、どのような病気か、予防法、検査・治療法など詳しく見てみたいと思います。
目次
どんな病気?
脳卒中(脳血管障害)には3つの種類があります。
脳梗塞
脳梗塞は脳の血管が詰まる病気。
脳卒中で死亡する原因の約60%が脳梗塞によるものです。
・ろれつが回らない
・言葉が出てこなくなる
・視野が半分になる
・右か左か半身のみの麻痺やしびれがある
・足がもつれて歩けない
・ものが二重に見える
・頭痛がする
・めまいやけいれん など
アテローム血栓性梗塞症
首から脳に通じる動脈や、頭蓋骨内にある太めの動脈内で、脂肪がたまったプラークができ、血管が狭くなったり、血栓ができたりして起こります。
ラクナ梗塞
大脳の深部や脳幹の細い血管が詰まって起こります。
心原性脳梗塞症
心臓内にできた血栓が血流にのって脳に到着し、脳内の動脈を詰まらせて起こります。
脳出血
脳の中の細い血管が血圧上昇などのきっかけで破れ、脳細胞が死んでしまう病気。
糖尿病や高血圧、脂質異常、肥満、喫煙、加齢などで動脈硬化が起こっている場合に起こりやすいです。
・頭痛やめまい
・半身麻痺
・意識障害 など
クモ膜下出血
頭蓋骨の下で脳を覆う3層の膜のうち、くも膜の下の血管が破れる病気です。
この血管は脳に血液を運ぶ役割りをしており、ここに動脈硬化や動脈瘤があると、突然血管が破れた時に膜と膜との間に血液があふれ、脳全体を圧迫してしまいます。
・突然の激しい頭痛
・頭痛とともに嘔吐やけいれん、意識障害が現れることも
検査方法
出血や梗塞の位置を特定するため、まず脳の検査を行い、さらに血圧や脂質異常症、糖尿病の検査を受け、動脈硬化や血管の詰まり具合を調べます。
脳の主な検査
CTスキャン
頭のまわりにぐるりとX線をあて、コンピュータで断層画像を作ります。出血している場所がわかります。
MRI検査
強い磁気を当てた時の細胞の分子の変化をもとに、断層画像を作ります。CTより細かい変化がわかります。
MRA検査
MRIと同じ機械を使い、血管だけの詳しい画像を作ります。太い血管の詰まりや動脈瘤の発見に役立ちます。
※MRIとMRAは、CTよりも鮮明な画像で診断できますが、磁気を使うので、金属製の器具(ペースメーカーなど)を埋め込んでいる人は使うことができません。
近年、検査の制度が向上し、症状がなくても脳卒中につながる血管の異常が見つけられるようになりました。
発症前に見つけることができれば、投薬治療や生活習慣の見直しで改善することも。
脳ドックなどの検診を受けることが大切です。
一口メモ:脳ドックとは?脳ドックとは、MRIを使って脳内の血管の状態を詳しく検査するものです。
動脈瘤や動脈硬化などを確認できます。
治療法
脳卒中は、発症からの時間によって治療の内容が変わってきます。
発症後1~2週間の急性期は、薬物療法で血流を回復。
発症後1ヶ月以降の慢性期には、投薬やリハビリテーションで再発の防止。場合によっては、手術が行われます。
薬物療法
脳梗塞の発作は、4時間以内であれば劇的な効果が見込まれる「t-PA静注治療・血栓溶解療法」もあります。
- t-PA静注治療
血栓を溶かし、脳血流を回復させる - 血液希釈療法
血液の粘度を下げる - 脳浮腫軽減療法
脳の腫れを抑える - 抗凝固療法
血栓を予防する - 抗血小板療法
血小板の血液を固める働きを抑える
など。
発症から早い段階の方が治療の選択肢は広がります。
予防するには
加齢などによっても動脈効果は進行しますが、生活習慣によるところも多いです。
動脈硬化の進行を抑えるためには、糖尿病の方や高めの血糖値の方はしっかり血糖値コントロールを行うこと。また血圧や脂質のコントロールも必要です。
- 生活習慣の改善(適切な食事、適度な運動、肥満解消、質のよい睡眠、ストレス解消など)
- 血糖・血圧・脂質のコントロール
- 禁煙
- 定期健診
まとめ
血糖コントロールが悪いと動脈硬化が進行し、血管が詰まりやすくなってしまいます。
脳の血管がつまると、脳梗塞などの命に関わる病気を起こすリスクが高まります。
動脈硬化の進行を抑えるには、血糖値だけでなく、血圧や脂質のコントロールなども重要です。
食事の改善、適度な運動、肥満解消、禁煙などを心がけ、定期的に動脈硬化の状態や脳ドックなどの検査を受けましょう。