骨粗鬆症【糖尿病が関係する危険な病気】とは?

これまで糖尿病は、骨密度には影響が少ないと考えられてきました。

そのため、糖尿病と骨粗鬆症の関連は注目されてきませんでした。

しかし、近年の研究で、糖尿病の人は骨折しやすいことがわかってきました。

糖尿病と骨粗鬆症との関係について見てみたいと思います。

目次

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症とは、骨密度が低下し、骨の内部がスポンジのようにスカスカになった状態のこと。

骨の中がスカスカなので、ちょっとした衝撃で骨折しやすくなります。

主な原因

  • 加齢
    加齢によりカルシウムの吸収が低下するため。
  • 閉経
    骨の新陳代謝を調節しているエストロゲン(女性ホルモン)が減少するため。
  • 食生活
    カルシウム・ビタミンD・たんぱく質など骨の形成に関わる栄養素の不足。
  • 生活習慣
    過度なダイエットや飲酒、喫煙、運動不足など。

  • ステロイド薬は骨量を減少させ、骨質を悪化させるため。
  • 病気
    糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎不全など。

糖尿病の方の骨折リスクは約2倍!?原因は?

これまで糖尿病の影響で骨粗鬆症になる、進行するとは考えられていませんでした。

しかし近年の研究により、糖尿病の方は骨密度が高くても骨折しやすいことがわかってきました。

インスリンの不足

インスリンには、血糖値を下げる働きのほかに、新しい骨を作り出す骨芽細胞に作用して骨の形成を促す働きがあります。

しかしインスリンが足りないと、骨の新陳代謝において”つくる”よりも”壊す”働きの方が強くなり、骨芽細胞は増えず、骨密度が低下してしまいます。

高血糖による尿へのカルシウム排泄増加およびビタミンD不足

インスリンの作用不足により高血糖になると、尿が多くなります。

その結果、尿とともに骨の材料となるカルシウムの排泄量が増え、体内はカルシウム不足に。

また、食べたカルシウムを体内に吸収させるには活性型ビタミンDが必要です。

その活性型ビタミンDは、ビタミンDを材料とし、インスリンの働きによって腎臓で作られるのですが、インスリンの作用が不足していると活性型ビタミンDが足りず、カルシウムを体内に吸収されにくくなってしまいます。

さらに活性型ビタミンDには骨芽細胞の働きを高める作用もあるのですが、高血糖状態ではその作用も低下してしまいます。

特に糖尿病腎症の人は注意!

特に合併症の一つである糖尿病腎症の方は、骨の材料であるカルシウムの吸収を助けるビタミンDの働きがよりいっそう低下してしまうため骨量が減りやすくなります。

より注意が必要です。

コラーゲンに糖がくっ付くことで骨の強度が低下

高血糖状態ではたんぱく質の糖化という現象が起きます。

糖化とは、糖とたんぱく質が結びつき、たんぱく質を劣化させること。AGEs(終末糖化産物)という物質が生まれ、体の細胞を傷つけて老化や様々な病気を招きます。

このAGEs(終末糖化産物)が骨のコラーゲン(たんぱく質)にたまると、鉄が錆びたような状態になり、もろく折れやすくなり、さらにAGEs(終末糖化産物)が骨を作る細胞の働きを妨げ、骨密度が下がり、骨粗鬆症を引き起こします。

糖尿病の方の骨折では、骨の構造を支える骨質の劣化が特徴的です。

また糖尿病で合併症が進み、神経症があると足底の感覚が鈍かったり、網膜症で視力が低下していたりすると、転びやすくなり、骨折のリスクが高まります。

骨密度は調べられるため、一見、高いと安心してしまいますが、糖尿病の方は、”骨密度が高くても骨折しやすい”、”合併症が影響して転びやすくなる”ということを知っておくことが大切です。

対策ポイント

骨を強化していくためには、食生活、生活習慣の改善が重要です。

血糖コントロールをしっかり行う。

HbA1cが7.5%以上の糖尿病の方は、健康な人と比べ、骨折リスクが1.47倍高いという報告があります。

その一方で、HbA1cが7.5%未満の糖尿病の方の骨折リスクは、健康な人と同程度だったそうです。

この結果から、日々の血糖コントロールがいかに重要化がわかります。

糖尿病治療の基本である、血糖コントロールをまずはしっかり行いましょう。

食事対策

まずバランスのよい食事を心がけることが骨粗鬆症予防の基本。

その上で、骨粗鬆症予防のために骨を強化する栄養素をしっかり摂りましょう。

摂り入れたい栄養素:カルシウム

体内のカルシウムのうち、約99%は骨と歯の材料として使われます。

骨では毎日新陳代謝が起こるため、カルシウムの補給が欠かせません。

しかし、日本人はあらゆる世代でカルシウムが不足しています。

積極的に摂るようにしましょう。

カルシウムを多く含む主な食品

チーズ、牛乳、木綿豆腐、桜えび、ひじき、ししゃも、小松菜、モロヘイヤ、切干し大根

一口メモ:マグネシウムも一緒に摂ろう! マグネシウムは、カルシウムの利用をサポートする栄養素です。

マグネシウムの約60%は骨に含まれ、体内のミネラルバランスを調整する役割を果たしています。マグネシウムが不足すると、骨粗鬆症になりやすく、痙攣やふるえ、動脈硬化なども起こしやすくなります。

骨の形成・強化に欠かせないミネラルです。

-マグネシウムを多く含む主な食品-
ひじきなどの海藻類、アーモンド、ごま、大豆、えりんぎ、ほうれん草など

摂り入れたい栄養素:ビタミンD

ビタミンDは、小腸でカルシウムとリンの吸収を促し、骨の代謝を助ける栄養素です。

不足すると、カルシウムが骨にスムーズに沈着されず、骨や歯がもろくなり、くる病や骨軟化症、骨粗鬆症の原因になります。

ビタミンDを多く含む主な食品

魚介類(イワシ、カツオ、マグロなど)、しらす干し、干ししいたけ、キクラゲ、まいたけ、ぶなしめじ

摂り入れたい栄養素:ビタミンK

ビタミンKには、骨の強化を助ける働きがあります。

ビタミンKを多く含む主な食品

納豆、ブロッコリー、ほうれん草、モロヘイヤ、チーズ、レバー

摂り入れたい栄養素:たんぱく質

人の体の臓器や筋肉、骨、皮膚、髪など主要の部分の材料になります。

たんぱく質を多く含む主な食品

鶏肉(むね)、プロセスチーズ、マグロ(赤身)、高野豆腐、卵、納豆

摂り入れたい栄養素:ビタミンB6、B12、葉酸

骨を丈夫にするためには、骨のコラーゲンの劣化を防いで「骨質」を良くしることも大切です。

ビタミンB6を多く含む主な食品レバー、マグロ(赤身)、にんにく、ごま、アボカド
ビタミンB12を多く含む主な食品サンマ、貝類(シジミなど)、レバー
葉酸を多く含む主な食品モロヘイヤ、ブロッコリー、ほうれん草、のり

控えめにしたい食品、避けたい嗜好品など

骨粗鬆症の発症、進行を抑えるために、控えめにしたい食品や避けたい嗜好品などです。

できるだけ食べたり飲んだりするのを止めたり、禁煙したりしましょう。

  • リン、塩分の摂り過ぎ
  • スナック菓子やインスタント食品の頻繁な摂取
  • アルコールの多飲
  • カフェインを多く含む飲み物の多飲
  • タバコ

運動対策

運動は、血糖値を下げるだけでなく、転倒予防のためにも重要です。

また骨は、負荷がかかるほど骨をつくる細胞が活性化してカルシウムが骨に沈着しやすくなり、強くなる性質があります。

骨折予防に有効な運動は、ウォーキング、ジョギングなど。

その他、家の中でも手軽に行え、骨密度低下防止に効果的な運動を紹介します。

※体の状態にあわせて無理なく続けることが大切です。治療中の方は、運動を開始する前に医師にご相談ください。

ウォーキング

普段運動をしていない人や高齢者が急に激しい運動をすると、かえってケガや事故につながる恐れがあります。

骨粗鬆症予防をはじめ、糖尿病予防・改善、健康づくりのためには、適度な運動を継続的に行うことが重要!

そこでおすすめなのがウオーキング。体力があるなしに関わらず、特別な用具も使わず、1人でもできる運動だからです。

まず今より1日1,000歩多く歩くことを目標にはじめましょう。

開眼片脚立ち(ダイナミック・フラミンゴ体操)

  1. まっすぐに立ち、床につかない程度に片足を上げる。椅子やテーブルに片手を置いても可。
  2. 左右1分ずつ、1セット行う。

太もものつけ根は、骨粗鬆症による骨折が多いところです。

股関節の筋力アップやバランスアップに効果的です。

かかと落とし

  1. 姿勢よくまっすぐ立ち、ゆっくり大きく真上に伸び上がり、ストンと一気にかかとを落とす。
    頭の上から見えない糸でつり下げられているイメージで大きく真上に伸び上がりましょう。
  2. 1日合計30回以上が目標!
    1日の合計が30回以上を目指し、空いた時間に少しずつ行いましょう。
    最初は少しずつで構いません。毎日継続して行うことが大切です。

かかと落としは、骨に体重と動きによる加速度をかけた負荷を加え、体全体の骨に効率よく刺激を加えることが目的です。

膝など関節に疾患がある方や骨粗鬆症の診断を受けている方、ご高齢の方などは 運動を行う前に医師にご相談ください。

日光浴

ビタミンDは、日光が皮膚に当たることで活性化します。

紫外線は、シミ・シワ・たるみなどの肌老化、皮膚がんの原因になるため、近年はできるだけ浴びないように言われています。

しかし全く浴びないというのは、骨にとっては大ピンチ!骨の健康が損なわれます。

美容のために過度に紫外線対策を行っている人などは、ビタミンD不足が心配され、お肌にとっては良くても、骨はダメージを受け、骨粗鬆症を起こし、骨折や寝たきりになるリスクが高まります。

1日5分、手のひらを太陽にかざしてください。

手のひらはメラニンが非常に少ないので、効率よくビタミンDが作られます。

特に、朝起きてすぐの太陽は、セロトニンという幸せホルモンを増やし、脳内ホルモンとしても、若返りとか睡眠にもよいそうなので、朝、行うのがおすすめです。

丈夫な骨を作るために、ただただ紫外線を毛嫌いするのではなく、上手に付き合いましょう。

まとめ

これまで糖尿病と骨粗鬆症は直接的な関係はないと考えられてきました。

しかし、糖尿病はインスリンの作用不足によって起こりますが、インスリンが作用しないと骨を作り出す細胞を減らしてしまいます。

また高血糖になるとトイレが近くなり、多尿などの症状がみられますが、そうすると骨の材料となるカルシウムも尿として排泄されてしまいます。

さらに合併症を併発し、糖尿病腎症が進むと、骨の材料となるカルシウムの吸収を助けるビタミンDの働きが低下し、骨量が減ってしまいます。

糖尿病の患者さんは”骨密度が高くても骨折しやすい”、”合併症によって転びやすい”、骨粗鬆症、骨折のリスクが高まります。

予防するためにも、血糖コントロールをしっかり行い、丈夫な骨を作る食生活、生活習慣を心がけましょう。